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仙台高等裁判所 昭和53年(う)25号 判決 1978年6月27日

主文

本件控訴を棄却する。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人脇山淑子提出の控訴趣意書記載のとおりであり、これに対する答弁は、検察官園田幸男提出の答弁書記載のとおりであるから、これらを引用する。

所論は原判決の量刑不当を主張し、被告人に対し刑の執行を猶予するのが相当であるというのであるが、記録を調査し当審における事実取調の結果をも参酌して検討するに、被告人は、昭和四八年四月一九日、強姦致傷罪により懲役三年、五年間保護観察付執行猶予の判決を受けたにもかゝわらず、昭和五二年二月ごろから暴力団員と交際して覚せい剤を覚え、本件覚せい剤取締法違反の各犯行を犯したものであり、原判示第一で譲り受けた覚せい剤の量(二・五グラム)が少量とはいえないこと、被告人はその前後にわたり多数回覚せい剤を使用していたもので、原判示第二の覚せい剤使用の犯行も偶発的なものとはいえないことなど諸般の犯情にかんがみると、原判決の刑(懲役一〇月)は相当であり(なお、被告人の前記保護観察は昭和五〇年九月四日以降仮解除になっていたが、原判決言渡前の昭和五二年八月二二日これが取消されているので、原判決当時再度の執行猶予を付することはできない。)、被告人の家庭事情、原判決後前記執行猶予期間が経過していることなど所論指摘の諸事情を考慮しても、被告人に対しもはや執行猶予に付するのは相当でなく、原判決の刑が不当に重過ぎるとは考えられない。論旨は理由がない。

よって刑訴法三九六条により本件控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中川文彦 裁判官 小島健彦 清田賢)

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